初恋
雨の休日のリビングにいる。
コーヒーをすする。
しずくのイヤリングをつけた
我が家の小さな庭の小さな緑。
至福の時である。
ある日の夕暮れ。
御茶ノ水駅に降り立つ。
神保町の古書店街を散策。
「 神田古本まつり 」
ある歌集を手に取る。
小さな声で読んでみる。
「 まだあげ初(そ)めし前髪の
林檎(りんご)のもとにみえしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれに あたへしは
薄紅(うすくれない)の秋の実に
人こひ初(そ)めし はじめなり
わがこころなき ためいきの
その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃(さかずき)を
君が情(なさけ)に酌(く)みしかな
林檎畠の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめし かたみぞと
問ひたまうこそ こひしけれ
- 島崎藤村・初恋 」
わが東京国際学園でも、まもなく
「 まつり 」がある。
第18回 「 文化祭 」
11月13・14・15日。
ぜひ、お越しを。
虫の声、雨の音。
そして、
Book(本)=声なき言葉。
秋の夜更け、じっと耳を澄ますものに
事欠かない季節である。
文 ― トモアキ