風立ちぬ
「 それらの夏の日々、一面に薄(すすき)の生い茂った草原の中で、
お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍(かたわ)らの
一本の白樺(しらかば)の木陰(こかげ)に身を横たえていたものだった。
そうして夕方になって、お前が仕事をすませて私のそばに来ると、
それからしばらく私達は肩に手をかけ合ったまま、遥(はる)か彼方(かなた)の、
緑だけ茜色(あかねいろ)を帯びた入道雲のむくむくした塊(かたま)りに
覆われている地平線の方を眺めてやっていたものだった。ようやく暮れようと
しかけているその地平線から、反対に何者かが生まれて来つつあるかのように・・・・・・
- 堀 辰雄著・風立ちぬ 」
わが東京国際学園の夏は、今年も熱い。
上田わっしょい 部活合同合宿。
多種多彩な夏期講習。
野球部、サッカー部、卓球部 全国大会出場。
そこにあるのは、
頬をなでる優しい「風」。
それとも、自らが起こす強い「風」なのか。
教科書から解放された夏。
美しい夢を追い求め、働き、恋愛をする。
自分のいる場所で、可能な限り誠実に
力いっぱい生きる。
心弾む季節に、想いをはせてみる。
「 列車にて 遠く見ている向日葵(ひまわり)は
少年のふる帽子のごとし - 寺山修司 」
それぞれの夏。
それぞれのまえに、風立ちぬ。
文―トモアキ